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さよならのあとで、今ここまでの時間があったことに今さらながら気がついて。
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僕らは再会を果たし、それぞれが約束したように大きく力をつけ、昔のように大きな敵と戦い、勝利し、何度か祝杯をあげた。
妖虎の勧める酒の味はまだ分からないけれど、アルコールで宙に浮いたような気分になるのは悪くなかった。
苦しんだ後に笑っては少し語り、世界の行く末を吐いても誰も茶化すことなく受け止めてくれた。
息をするのが楽だなあと、いつもまとう学ランの襟の詰まり具合を思う。
ほろ酔いの僕を帰り道、二世が夜風を切り、小さな背に乗せて家路へ。
見降ろす街の明かりがぼやけ、頬に当たる湿った風に夏が近いことを思う。
「なあ、今日は寄っていかないのか?」
「君、僕を送るのはそれが目的だろ」
「そんなことねぇぜ」
お酒の後に二人で寄り道をするのは嫌いじゃなかった。
彼はへの字に曲げた口の端をデレッとゆるませ、どれにしようか、これにしようかくるくる表情を変える。
思わず噴き出しては小突かれ、そんなふうに酔い覚ましのラーメンをすすった。いつも。
たくさんの話をしていて、普段流れる時間はずいぶん違うなあと感じる。
あの頃、僕の家には悪魔が半ば居候のように出入りしていた。
毎日出会う知らなかったことに胸をときめかせていた。
一度別れを経験した後も同じように話せることが嬉しかった。
彼と違う時間を過ごしていることが不思議だった。
悪魔ではない僕はきっと彼や彼らより先に逝く。
もしかしたら不老不死なんかになって、そんな未来もあるかもねと、かつて見てきた驚きたちを思い返せば時間の流れ方が変わったことに気がついたりして。
今食べてるラーメンが最期から何度目かの食事かなんて考えるようになった自分を笑って秘密にした。
君が、僕と一緒にいられなくなることに気がつくのは、もう少しあとで、いてくれよ。
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