忍者ブログ

[PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

犬の子人の子/img松下太平(松下悪魔くん)

まだロクに歩けもしない子が
書生のように生意気な口をきく
私にはそれが大層誇らしかった
どんな大人になるんだろうね

敗戦と高度経済成長
汚さだけでなく
正義感を持って
この国を統べ道を開く
そんな勇士になるんだろうね

そう思っていた
       ある日
暗い部屋で明々とブラウン管
あの子はそれを
ジッと見ている
以前せがまれテレビ局から直接借りてきた
今まで記録された
各国の映像集

静かに部屋に入り
後ろからそっと一緒に見る

幼子が見るには少々分かりにくいものだろうに

『どこが面白いんだい?』
そう言って 幼子の返事を待つ
映像はダラダラ流れ続ける(時間を無駄にしたかな)
と その時



画面の中に 二人の男
閑散とした広場
片方がもう一方の頭を指す



息子は同じ動作をブラウン管に
向け   顔をそらす


ガタアァアア ァ ン
ゴト リ


音の情報はなく
頭を指された方が
崩れ落ちる
(糸の切れた木偶人形)
(それは確かに一瞬前まで人であったというのに)

どこの国だか分からないが
それは真実にあった
 処刑のシーン
(あまりにもあっさりと)

この子は
  (胸を痛めていたのか)
この子が
  (撃ち殺したようにも見え)
わたしが
  (見ないように暮らしてきた日々を凍りつかせ)

もうブラウン管には
別の映像が バラバラと目的もなく
流れ続け

この子はそんなぞんざいな編集の中から
このシーンの位置を(きっとたいした回数見ることもなく)
確実に記憶し
理解し
見つめ
目を伏せ たのだろう

私に言葉を使わず語る
         わかるだろう?
         人は人を

それ は
自分の富のため幾人も蹴落としてきた
私の原罪を見せ付けられた ようにも思え
存在を否定された ようにも思え

『お父さん』
息子は尋ねるのではなく言い切る

『神様は無能ですよ』




(ああ、今、現時点で時代の寵児とも言われる私は)
(息子の 指一本に ねじ伏せられている)

「そんな残酷なもの子どもの見るものじゃあないよ」
そういって電源を切り
部屋から逃げ出るしか できなかった



この距離ではだめだ
この距離では愛せない

PR

Copyright © ソレソレ字 : All rights reserved

「ソレソレ字」に掲載されている文章・画像・その他すべての無断転載・無断掲載を禁止します。

TemplateDesign by KARMA7
忍者ブログ [PR]