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青空にむかって緑が駆けのぼる。
すがるように追うように、僕は、
足に水が冷たい。
いや、これはあそこで倒れている敵の流した血だ。
僕の足に絡み付いている。
…敵?
あれは何?
誰が、倒した?
どうして、倒した?
助けて、って言われたんだよ。
助けて、僕、殺されちゃうよ、あいつにあいつにあいつに。
助けて、たすけて、鬼太郎さん、たすけて。
僕は強いので手紙の向こうの君を助けられます。
僕は死なないので戦う事はあまり怖くありません。
でもね、争う事は苦手なんです。
知ってますか?声は耳から入って脳に届きますが、言葉は口から口へ入るんです。
喉の奥に戦う相手の思いが詰まって、僕は嗚咽を吐きます。
吐いても排出されなかった分は、その下の胸に流れ込んでくる。
胸に溜まってしまったら、そこから出ることはありません。
面倒くさい事に僕は死なないので、言葉でたぷたぷになって今にあふれてもおかしくない胸を抱えたまま生きなければなりません。
これ以上増えても困るので、戦わないで済むよう相手に声をかけます。
でもだめだったときは。
てきはたおしたもうだいじょうぶだよ。
ありがとうきたろうさんありがとうありがとう。
いつか死ぬ子は死を恐れます。
いつか死ぬ子は死ぬまでの一生を懸命に生きようとします。
恐れることのない僕は時間を気にせず暮らしています。
悪くはないですし、誰かを羨むこともありません。
ただ、今にもこぼれそうなもの胸にを抱えているのは少し嫌です。
倒れた敵から僕に伸びる血は絡み付いて僕を飲み込もうとします。
それは恐怖とは違う、けれどもとても嫌な感覚です。
僕の胸に溜まったものと同質の、嫌な。
僕は、走り出していました。
走り出して、いたんだ。
嫌な感覚が追って来る。
敵からずいぶん遠く離れたはずなのに、おかしい。
と思ったら、影と言う影からコールタールのように黒くて臭くて粘つくものが足を這いずり上り体を飲み込んで僕を地面に倒そうとする。
嫌だ。
これは、嫌だ。
少しでも影を減らそうと僕は光のあたる場所へと走って走って走って。
森をすり抜け、茂みをかき進み、丘の上へ。
進むほど浴びる光が増え、だんだんとコールタールは溶け落ちていく。
駆け上る風に吹かれる斜面の緑、僕も同じ、丘の上、遮るもの何もない青空、
光を、光に、
ああ、届く、たどり着いたなら、きっと。
きっと全部、全部ぜんぶきれいに消えるんだ、ね?
吹く風よりも勢いよく駆け上った先で何かにぶつかり、それが被さってきて視界が覆われる。
紅の隙間から青空が見えて
「にゃあ~」
耳元で、よく知ってる声がまぬけに響く。
「ねこむすめ…?」
「ちょっと、びっくりしたじゃないの!え、鬼太郎?え、ちょっと、やだどうしたの?怪我してるじゃない、いたそうだよ!?」
そうだよ、いたいよ
「大丈夫、もう終わったから」
痛いなあ、
「大丈夫なわけ無いでしょ!また、黙って、戦って…!」
心配な顔、泣きそうな顔、でも君の笑顔が見たいなあ
「じゃあ、大丈夫じゃないよ、いたいんだ」
手当てをしてくれるのは君、手当てをされてるのは僕の体、けれど
「もう、無茶ばっかりして!歩ける?」
居たいなあ、
君が居るこの世界に、
「大丈夫、歩けるよ」
君と一緒なら、
「じゃあ、早く帰ろう、もう無茶はしちゃだめよ」
手当てをされたのは体だけじゃないんだね
「いたいなあ」
「帰ったらよく治る傷薬、塗ってあげるからね」
…はい、よろしくおねがいします。
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