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星のラブレター/img鬼太郎(アニメ3期鬼太郎)

拝啓


いつも

コンニチハ

こんばんは、





「何を書いとるんじゃ?」

「え、と、手紙です」

「ほほう、珍しいのう」





こんばんは、僕は

こんばんは、突然だけど

こんばんは、突然手紙なんて出して


「あら、何書いてんの」

「別に…、手紙だよ」

「へえ~、いつももらうばっかりなのに」

「うるさいなあ、気が散るから帰ってよ」

「何よォ、気取っちゃって!」




こんばんは、僕は

こんばんは、突然だけど

こんばんは、突然手紙なんて出して






こんばんは、ユメコちゃん。

僕は前から君に言いたかったことがあります。

顔を見ながらだと言えなくなりそうなので、手紙を書いてます。


「…ふう…」

「な~に書いてんの、鬼太ちゃん」

「!!~…邪魔するなよ、ねずみ男!」

「か~!やだね~、ガキのくせに色気づいちゃって」

「な、何のことだよ!早く帰れよ!」

「はい、はい。大人はもっとスマートに事を運ぶのよ、無駄な争いからは退散退散」

「うるせえ!早くあっち行け!」


こんばんは、ユメコちゃん。

僕は前から君に言いたかったことがあります。

顔を見ながらだと言えなくなりそうなので、手紙を書いてます。

そういえば人間の家に手紙を届けるときって切手がいるんだよね。今度森を出るとき買い忘れないよう





こんばんは、ユメコちゃん。

僕は前から君に言いたかったことがあります。

顔を見ながらだと言えなくなりそうなので、手紙を書いてます。


「何を書いてもうまく伝わらないんじゃないかなあ…でも、とても」


僕は、よく君に会えるけど、


「こんな手紙まで書いて、僕は何を何て言えば」


伝えたいことは、


「怖いものがあるなんて」


直接言えば良いんだろうけれど、


「読んでくれないかもしれない」


もしもこれを君が読んで、


「伝えなきゃいいのかな」


嫌な気持ちになったとしても(そうさせたなら謝るけれど)、


「でも」


僕は、もっと


「君に」


会いたい。





伝えたいことがあるんだ。

時間かかっちゃったんだ(途中邪魔が入ってね)。

書き直しても書き直しても書き取れないんだ。

けど、届けようと思ったんだ。

君の家のポストの前まで行って、何度も帰ったよ。

男らしくないのか、男らしくないことをするのをやめようとしてるのか。

わからなくなっちゃったから、君に直接渡すことにしたんだ。

森を抜け、川を渡り、山を越え、君の町、君の家、

月が照らす、

君の窓、

(リー、コロコロ)、こおろぎが、

(リー、コロコロ)、つむぐつむぐ夏の夜の調べ、

(リー、コロコロ)、終わらなければ良いのに、終わらなければ、

(リー、コロコロ)、僕の胸が跳ね上がることも、

(リー、コロコロ)、

(リー、コロコロ)、

(リー、コロコロ)、


(         )、ないのに。


大丈夫、うん、大丈夫。

届けようと思ったんだ。

届けたい気持ちがあるんだ。

だから夜の窓をたたくよ。

眠る君の窓をたたくよ。

届いてほしい気持ちを言葉で包んで、

読んで、くれるかな。


なめらかに風が僕の足を撫でていく、湿気で鈍く光る夏の星空。

高いビルはなく、けれど大木もなく、電柱の上から見る夜の町は、

月明かりのせいでてらてら光る屋根たちが凪いだ海の水面のよう。

今は、ここは、僕の世界だ、けれど、足元にある窓の向こうへ、

向こう、

向こうへは、

向こうには、

もう、君はいないんだ。


時間かかっちゃたんだ、

君に届けたい言葉が、気持ちがあったことに、

気がつくのに。

言葉にしたら恥ずかしくなっちゃったんだ、

けれど伝えたくて、


「あいしてます すきにしてよ」


君に、


「会いに行くよ」





風に乗って僕の言葉がいつか

君と繋がっていた夜の窓に届きますように。

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